勤続ウン十年…真面目に働いてきたつもりだが、昨夏、ふとしたことから会社に行けなくなった。
あの日はどうにも頭痛と吐き気が止まらなかった。朝、起きて支度はしたものの脚が鉛のようだった。それでも必死に駅までたどり着き、慣れた階段を登って改札を…
どうにかして改札を…通らなきゃ…
しかし抜けられないのだ。
手がブルブル震えた。
吐き気がまたやってきた。
全身がスウッと冷たくなって、眼の前がモノクロで歪んで見えた記憶がある。
行かなくちゃ、今日やらなきゃいけない案件を持ってる。あれをやらなきゃ迷惑をかける。
どうした私、頑張れ私。
改札を通れば、いつもの急行が来てルーティンのように乗ってしまえば会社に行ける。
そのはずなのに、その日は改札を通って電車が来たら、電車に吸い込まれそうな恐怖があった。
私は、その日から仕事に行けなくなった。